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ココロの眠るベッド


少し肌寒く感じるある日のこと。


病弱な一匹の犬“ココロ”から


四匹の子犬が産まれた。


ココロの体調が優れなかったため


親子で一緒に飼うことはできず


彼らは産まれてすぐ


別々の家に引き取られてしまった。


彼らはすくすく育つことになるが


産んでからわずか1週間後


彼らの産みの親犬であったココロは


病気の為亡くなってしまった。


彼らに生を与えることができたからか


最期はとても優しい顔をしていた。


そして2年が過ぎた頃


ココロの飼い主は


久しぶりに四匹の成長をまじかで見たいと思い


それぞれの飼い主に頼んで集まってもらった。


目も開いていなかったその子犬たちは


ジョイ・アング・サッド・ハピー


と名付けられ立派な成犬になっていた。


言葉にはできない喜びと感謝の気持ちで


いっぱいになった。


四匹とも毛並みや大きさはほぼ一緒で


傍から見ると区別がつかないが


それぞれの表情には分かり易い特徴があった。


ジョイはいつもニコニコしているが


アングはなんだか不機嫌そうに見えた。


サッドはどこか悲しそうな表情を浮かべていて


ハピーはとても穏やかそうに微笑んでいた。


『それぞれの育ってきた環境の違いだろう』と


その時は気にしていなかったが


血を分けた兄弟である彼らは5分と


同じ場所に居ることはできなかった。


お互いがお互いを威嚇し合っていたのだ。


兄弟であることに気づいていないのか


はたまた単純に慣れていないだけなのか


理由は定かではないが


ココロのことを想うと


すごく寂しい気持ちになった。


その一件以来飼い主同士は親しくなり


定期的に集まって逢わせてはみるものの


一向に仲良くなる気配はなかった。


悲しい気持ちはありつつも


それぞれが健康に育っているのであればと


気にしないようにして過ごした。


心も温かくなるような気候が続いたある日


押し入れを整理していると


ココロが昔使っていた犬用のベッドを発見した。


綺麗に洗濯もし年数も経っていたため


人間の鼻ではココロの匂いを辿ることは


できなかったが『もしかしたら!』と思い


再び集まったときに


それをゆっくりと彼らの前に置いてみた。


すると不思議なことが起きた。


一匹ずつ代わりばんこにそのベッドに入り


寝転がるようなポーズをとっていた。


そして4、5回それを繰り返したのち


突然四匹がじゃれ合いだしたのだ。


互いに匂いを嗅ぎ合い


鼻同士を近づけて


甘噛みもし合って


高めのテンションで吠え合って


そしてアイコンタクトで会話をしていた。


どうしてそうなったのかはわからない。


しかしそのじゃれ合う様子は


たしかにココロが1つになっているように見えた。


敬遠して触れ合えなかった


空白の期間を埋めるように


思い切りじゃれ合っていた。


これはあくまでも僕の推測だが


きっとココロはそのベッドにちゃんと居て


ジョイ・アング・サッド・ハピーは


一匹ずつベッドに入ったときに


「仲良くしなきゃダメでしょ!


あなたたちは私の大切な家族なんだから」


そう叱られたのだと思う。


全部が一緒じゃなくてもいい。


でも心はいつも1つでいてほしいという


思いが彼らに通じたのかもしれない。


じゃれ合っている彼らの後ろに


優しい顔が浮かんでいるのが見えた。

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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では、また次のブログでお会いしましょう(^^)ノシ

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