愛情は私とあなたの間に


世界で一番賢いその科学者は


IQが200を超えていた。


単純な知識の量だけでなく


初めて見た物であっても


高い洞察力・推理力・ひらめき力をもって


その物の仕組みをいとも簡単に紐解くことができた。


いわゆる彼は“奇才”だった。


物理学・化学・生物学・天文学・情報工学・地質学・環境学など


30近い学問で論文を発表し50以上の学問に精通していた。


周囲の人は「彼はこの世のすべてを理解している!」と称賛し


彼自身も「僕が生きている間に起こる事象については、ね」と


まんざらでもない様子だった。


しかしそんな彼にはたった1つだけ分からないことがあった。


それは『愛情とは何か?』という


多くの人が一生をかけて話し合い確かめ合うテーマだった。


凡人にとってはその答えが出ないことは


あまり大きな問題ではなかったが


あらゆる物事を理解し説明できる彼にとっては


この上ない苦しさとなった。


小さいころ“神童”と呼ばれ


否応なしに特別扱いを受けてきた彼は


数こそ少ないものの同じように“天才”と呼ばれる者たちと


仲を深め友情について語り合うことは辛うじてできたが


「愛情」はそうはいかなかった。


世間でいうところの恋人のような間柄になった


女性はこれまでにも何人かは居た。


しかし


『この気持ちは愛情なのか?』


『愛情があるのとないのでは何が違うのか?』


頭をフル回転させ


世界一の洞察力や推理力を駆使したが分からず


喧嘩に発展したときも


あらゆる本を読み知識を習得したが


結局彼女たちの心は掴み切れず


「愛情」を確かめ合う恋人はできなかった。


この時彼は生まれてはじめて


『分からないことが苦痛にならない』人たちを


心の底から羨ましく思った。


プライドはズタズタになり心は半分折れかけてはいたが


その後も色んな書物を読み漁り


心理学や人間工学、脳科学や遺伝子学など


自分が知りうる限り「人」を対象にした学問を研究し


その答えにたどり着こうとした・・・


が、やはり答えはでなかった。


そんな難問を抱えたあくる年の8月


覇気のない彼を見かねた友人が海へ連れ出した。


気温は十分だが海開き前ということもあり


人はほとんどいなかったが


砂浜で一緒に文字を書いて笑い合っている


カップルが目に止まり騒がしい気持ちになった。


しばらくすると書いた文字を消さずに


どこかに行ってしまった。


カップルが戻ってこないか確認しつつ


近づいてみるとそこには


恥ずかしさからかとても小さかったが


綺麗な字で「I LOVE YOU」と書いてあった。


その文字を見て久しぶりに脳に明かりが灯った。


彼は友人に「愛情は自分と相手の間にあるんだよ。


自分ひとりで考えても答えがでない訳だ!」と伝え


カップルにお礼を言いに行くため


裸足のまま飛び跳ねるように熱い砂を駆けていった。

 

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