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自動販売機

  • 執筆者の写真: iCR
    iCR
  • 4月10日
  • 読了時間: 2分

今入社3年目の私の目の前には


あの日の私とよく似た自販機が置いてある。


2種類の飲み物が売り切れていて


他の飲み物たちは力なく光っている。


「売切れ」の文字は


いまだ煌々と光っているようにも見えた。


私はこれまで2つの夢を諦めている。


パティシエとモデルだ。


パティシエは中学1年生の時の夢で


ケーキ屋さんのショーケースに並ぶ


宝石のようにキラキラしたスイーツを見て


『食べる前からこんなに人を幸せな気持ちに


させられる仕事ってすごい!』って


何の計画もなしにただただ憧れた。


しかしその想いは


「器用で根気強い人しかなれないのよ」との


母親の悪意なき一言で消え去った。


母親に従順だった私にとって


その言葉はパティシエを諦めるには十分過ぎた。


モデルを志したのは高校2年生の時。


「○○ちゃん、モデル並みのスタイルだよっ!」と


たまに褒められたその言葉を真に受けてしまい


いつからかメイクやファッションだけでなく


歩き方にまでこだわりだして


ついには定期購読していた雑誌の


読者モデルのオーディションに応募するまでに至った。


しかし一次審査に落ちたことで


私以外誰も知らない2つ目の夢も


あっけなく終わりを迎えた。


どちらもあまりにも短い夢ではあったが


私の中ではその時その時はたしかに“夢”だった。


私の気持ちが充電されれば


まだ追いかけることも不可能ではない夢だけれど


もうそんな気持ちが湧かないことを


「準備中」ではなく「売切れ」の文字が


残酷なほどに物語っていた。


これからももしかしたら


ひとつまたひとつと「売切れ」が出てくるかもしれない。


それでも残っている夢を探して


そこに私らしさを見出していくことは


できるかもしれない。


迷い続けるだけで


何も選べずに終わってしまうよりは


よっぽどいいはずだ。


「ーーーチャリン、チャリン、チャリン」


私は時間切れで返ってきた小銭を


もう一度投入口に強く押し込んだ。

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

では、また次のブログでお会いしましょう(^^)ノシ

#人生を考える1ページ #自動販売機 #気づき #癒し

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