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萱草色のシエスタ


2本の針は真上でピッタリと重なった。


背もたれにあずけた体をうんと伸ばすと


頭のスイッチは一旦オフになる。


午後からもうひと踏ん張りするために


エネルギーの補給は忘れない。


なるべく行儀悪くはならないように


他人より早めにお昼を食べ終えた。


ここからがちょっぴり幸せな時間。


今は影になっているが


午前中ゆっくり昇ったお陽さまの光で


優しくあたためられていたテーブルが1つある。


そこに座り少しだけうつぶせ寝をする。


小さく開いた窓からは


心地よい眠りに誘うかのように


澄んだ空気が時折入ってくる。


その風は秋のちょうど真ん中を感じさせる


金木犀の香りも一緒に運んでくる。


目を閉じたまま浮かぶ


きれいなオレンジ色の花に


ほんのりと気持ちが嬉しくなる。


車が行き交う音や


遠くで聞こえる工事の音


人の話し声や


ブラインドが風に揺れている音。


全てがオーケストラの一つの楽器だと


思えるほどに心は穏やかだ。


通いなれたオフィスの


見慣れたスペースで


私は柔らかく眠っている。


もっと深く入っていきたいような


このままを漂っていたいような


そんなもどかしささえも


今は堪能している。


針に追われない時間を心が泳いでいる。


・・・んっ・・・・・?


次第に周囲の音が大きくなってきた。


時計を見ると


長針と短針はまた鬼ごっこを始めていた。


『よーっし!』


頭のスイッチを入れ直すため


私はめいっぱい深呼吸をした。

 

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