赤いワインと2粒のチョコ


『もっと大人っぽくなりたい』と


そんな思いで衝動的に車を走らせた20歳の青年は


今バーカウンターに座っている。


店内には心地よいジャズが丁度よい音量で流れ


ダンディなバーテンダーが一つ一つ丁寧に


グラスを拭いていた。


ネットで見た“落ち着いて飲める店の特徴”が


すべて詰め込まれたような雰囲気が


逆に僕には落ち着かない原因になっていた。


すぐにバレるであろうかじった知識を元に


いくつか質問をしてオススメの赤ワインを注文した。


検討のつかない高そうなグラスに


上品な赤ワインが半分くらい注がれていく。


何かの動画で観た


『ワインの飲み方』を思い出し


鼻の前でゆっくりとグラスを揺らす。


自分でも分かるそのぎこちなさに


ものすごく恥ずかしさを感じた。


それでも独特な薫りに包まれて


どこか誇らしげな男性が


グラスには映っていた。


この時点で心は9割ほど満足していたが


勿論このまま帰るわけにはいかない。