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赤いワインと2粒のチョコ


『もっと大人っぽくなりたい』と


そんな思いで衝動的に車を走らせた20歳の青年は


今バーカウンターに座っている。


店内には心地よいジャズが丁度よい音量で流れ


ダンディなバーテンダーが一つ一つ丁寧に


グラスを拭いていた。


ネットで見た“落ち着いて飲める店の特徴”が


すべて詰め込まれたような雰囲気が


逆に僕には落ち着かない原因になっていた。


すぐにバレるであろうかじった知識を元に


いくつか質問をしてオススメの赤ワインを注文した。


検討のつかない高そうなグラスに


上品な赤ワインが半分くらい注がれていく。


何かの動画で観た


『ワインの飲み方』を思い出し


鼻の前でゆっくりとグラスを揺らす。


自分でも分かるそのぎこちなさに


ものすごく恥ずかしさを感じた。


それでも独特な薫りに包まれて


どこか誇らしげな男性が


グラスには映っていた。


この時点で心は9割ほど満足していたが


勿論このまま帰るわけにはいかない。


スマートな顔をつくり勇気を出して一口。


「・・・ゴクリ。」


考えるよりも早く身体が反応した。


『このお酒の何を味わえというのか?』


そんな意味不明な不満を抱きながらも


笑顔でバーテンダーの顔を見る。


『お口にあったようで何よりです』というような


表情を返してきてお酒には問題がないことを確認した。


お茶やコーラであれば一瞬で飲み干せる


その量が今はとてつもなく多く感じる。


店内を眺め雰囲気を楽しんでいるように見せながら


『どうするか?』ひたすら思考を巡らせていた。


すると2つ隣の席に座っていた見知らぬ女性が


「この間のチョコのお礼♪」と言って


2粒のチョコレートをくれた。


その女性はバーテンダーに


「違うお店で一緒になったことがあって~・・・。」


そんな切り出しで架空の話しをし始めた。


救いの手か勘違いかはわからなかったが


女性に感謝を伝え1粒食べてみた。


口に残っていたワインの酸っぱさや苦さが緩和され


作っていない素直な笑顔が戻った。


帰りの代行の車の中で


「お兄さん若いのに一人でバーなんて大人だね!」と


運転手からの愛想の良い質問に


「背伸びをしすぎちゃいました」と照れくさそうに答え


残っていたもう1粒を口に入れた。

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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では、また次のブログでお会いしましょう(^^)ノシ

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