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ちゃばのフォトフレーム

最近ちゃばが旅立った。

いっつも一緒に居た私の愛犬。

「病気に早く気づいてあげられなくてごめんね。」

「いっぱい怒っちゃってごめんね。」

「もっとおやつあげられなくてごめんね。」

ちゃばの写真が入っているフォトフレームに向かって

亡くなった現実を受け入れられないまま

毎日私は謝っていた。

自分自身を憎く思っていた。

そんなある日

いつものように一人

「ごめんね。」を

ちゃばに向かってかけていると

『まいちゃん。』

って声が聞こえてきた。

『ここだよ。こっちこっち。』

明らかにちゃばの写真から聞こえていた。

「ちゃば?ちゃばなの?」

『そうだよ。驚いた?』

写真の中のちゃばは笑っているように見えた。

しかし写真から声がしていることへの驚きや

ちゃばと話せることへの喜びはほんの一瞬で

病気から救えなかった思いがすぐに心を埋め尽くし

「ちゃば本当にごめんね。」

大粒の涙とともにそんな言葉がこぼれた。

それから朝が来るまでちゃばと色んなことを話した。

ちゃばはわたしに

『茶色の柴犬だから'ちゃば'はどうかなと思ったよ。』とか

『散歩の時間もう少しほしかったな。』とか

『トイレ上手に出来てるときはもっと褒めてほしかった。』とか

散々文句を言ってきたが

いつも最後は

『でも、ありがとう。』って言ってきた。

わたしは文句を言ってくれている方が気が楽で

最後の「ありがとう。」がなかなか受け取れなかった。

そして朝日がカーテンの隙間から差し込むころ

ちゃばはいきなり

『ごめんね。』

と謝ってきた。

はじめは聞き間違いだと思っていたが

少しさみしげに見えたその表情と

つぎの言葉を聞いて間違いではないと分かった。

『そろそろ天国に帰らなきゃいけ・・。』

「いやだ!!」

わたしは信じられないという気持ちより

信じたくないという気持ちが上回ってしまい

自分でもびっくりするくらい大きな声で

ちゃばの言葉を遮った。

しばらくの沈黙のあと

うなだれるわたしにちゃばはこう囁(ささや)いた。

『まいちゃんは優しいから

きっとぼくが死んだことを自分のせいにしている。

ぼくは天国で楽しかった思い出に浸っていても

まいちゃんはいつも「ごめんね。」って言ってくる。

ぼくまで辛くなるから

もっと「ありがとう。」って言ってほしいな。』と。

一晩中喋っては泣いて

枯れ枯れの酷い声になっていたが

どうしてもこれだけは言いたかった。

「でもねちゃば。

死んじゃう直前ちゃば泣いてたよね?

病気で辛くて痛くて苦しかったんでしょ?

だからもっと早く気づいてあげられたら

きっと・・・・・。」

『それは違うよ。

病気が辛くて泣いてたわけじゃない。

ぼくの最期を看取るとき

まいちゃんがあまりにも辛そうな顔で

「ごめんね。」ってたくさん言ってたから。

だからそんなに自分を責めさせてごめんね。

ってそんな気持ちで涙が溢れたんだ。』

『もっと散歩できなくてごめんね。

もっといい子でいられなくてごめんね。

トイレもいっぱい失敗しちゃってごめんね。

たまに強めに噛んじゃってごめんね。

もっと

一緒に居られなくてごめんね。

はじめはそんな気持ちでいっぱいだった。』

『でもまいちゃんがぼくの病気に気づくのがもっと遅かったら

まいちゃんとの時間はもっと短かったんだよね。

そう思ったら

ごめんね。でもいっぱい散歩してくれてありがとう。

ごめんね。でもいい子に育てようとしてくれてありがとう。

ごめんね。でもトイレ出来た時褒めてくれてありがとう。

ごめんね。でも噛んでも怒らないでいてくれてありがとう。

ごめんね。でも

ぼくと一緒に居てくれてありがとう。

そう自然に思えるようになったんだ。』

その言葉を聞いて

わたしはちゃばとの楽しかった思い出まで

自分で黒く塗りつぶそうとしていたことに

はじめて気づいた。

そして最後にちゃばはこう言って帰って行った。

『まいちゃんは優しいから

きっとまた「ごめんね。」って言っちゃうと思うんだ。

もし「ごめんね。」って言っちゃったら

続けて「でも、」って言ってほしい。

そしたらきっと最後は「ありがとう。」に変わるから。

ぼくの写真がさびしそうに見えるときは

まいちゃん自身がさびしく思っているときなんだよ。

ぼくはいっぱい笑っていたいな。』

それ以来ちゃばの写真が喋ることはなくなったが

ちゃばが笑顔でいる日は少しずつ増えているような気がした。

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

物語はフィクションです。しかし、身近な人や自分のペットとお別れはいつかは来るものです。

もちろん辛く悲しいことではありますし、嘆くことは自然なことだと思います。

しかし思い切り嘆いて、悼んであげた後はたくさんその人やペットとの楽しい思い出を思い出してあげてください。

そして最後は「ありがとう。」の言葉をかけてあげてください。

ブログを読んで疑問に思ったことや感想などありましたら

[info@icr-kokoro.com]宛にメールいただけると嬉しいです。

では、また次のブログでお会いしましょう(^^)ノシ

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