top of page

コーヒーとリモコン

  • 3月23日
  • 読了時間: 2分

朝のキッチンに、コーヒーの匂いがゆっくりと広がる。

まだ完全には目覚めていない頭に、その苦みは少しだけ強い。

マグカップを両手で包みながら、僕はリビングのソファに腰を下ろした。


テーブルの上には、リモコンが置いてある。

いつもそこにあるはずのものだ。

昨日も、一昨日も、その前の日も。

なのに、改めて見ると、ずいぶんと無表情な道具だと思う。


テレビをつける。

朝の情報番組が、にぎやかに始まる。

天気、占い、ニュース。

どれも急いでいて、少しだけ大げさだ。


コーヒーを一口飲む。

まだ熱くて、舌の奥がじんわりする。

その間に、リモコンで音量を少し下げる。

このくらいが、ちょうどいい。


特別なことは、何も起きない。

今日の予定も、いつも通りだ。

仕事があって、帰って、また夜になる。

それだけだ。


それでも、

コーヒーが冷めていく速さと、

番組が切り替わるタイミングと、

部屋に差し込む朝の光が、

不思議ときれいに噛み合っている。


ふと、リモコンを裏返す。

電池のふたに、小さな傷がついていた。

いつの間についたものか、思い出せない。

きっと、忙しい日々のどこかで、

雑に扱ったのだろう。


でも、

それでもリモコンは、今日もちゃんと動く。

文句も言わず、

押された通りに反応してくれる。


コーヒーも同じだ。

高級じゃなくても、

お気に入りの豆じゃなくても、

朝に一杯あるだけで、一日が少しだけ整う。


僕らは、

大きな出来事や、

派手な幸せを探しがちだけれど、

実際には、

こういう小さな道具や習慣に支えられて生きている。


リモコンがなければ、

立ち上がる回数は増えるだろう。

コーヒーがなければ、

朝はもう少し無愛想になるだろう。


どちらも、

なくても生きていける。

でも、あると、ちょっとだけ楽になる。


その「ちょっと」が、

毎日を続けるには、案外大事なのだ。


空になったマグカップを、

シンクに置く。

テレビを消すために、

リモコンをひとつ押す。


カチ、という音がして、

部屋が静かになる。


今日もまた、

何気ないものに助けられながら、

一日が始まっていく。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

ブログを読んで疑問に思ったことや感想などありましたら

コメントいただけると嬉しいです。

では、また次のブログでお会いしましょう(^^)ノシ

コメント


bottom of page