向日葵のプロムナード
綺麗に舗装されたコンクリート道は途中で終わっている。
その先には、多くの人が踏み歩いてきたであろうあぜ道が伸びていた。
境目はあまりにあっけない。
白線も標識もなく、ただ「ここまで」と言わんばかりに舗装が途切れている。
振り返れば、真っ直ぐで歩きやすい道が続いていた。
先を見れば、細く、少し歪んだ土の道が、陽炎の中へ溶け込んでいる。
夏の午後だった。
照り返す日差しに、アスファルトはまだ熱を残し、
足元の空気がゆらゆらと揺れている。
蝉の声が遠く近くで重なり、
風が吹くたび、青い匂いが鼻をかすめた。
あぜ道の両脇には、向日葵が並んでいた。
背丈は不揃いで、どれも完璧とは言い難い。
茎は少し曲がり、葉には虫食いの跡があり、花弁も揃っていない。
それでも、向日葵たちは揃って空を向いていた。
まるで、何かを信じる方向だけは間違えまいとしているかのように。
私はしばらく立ち止まり、どちらの道に進むべきかを考えていた。
舗装路は安全だ。
迷うこともなく、足を取られることもない。
誰もが安心して通れることが保証されている道だ。
だが、その先には、もう何も続いていない。
一方、あぜ道は違う。
靴は汚れるし、歩幅も定まらない。
小石に躓くかもしれないし、
いつの間にか、行き止まりになっている可能性もある。
それでも――
確かに、誰かがここを歩いてきた跡がある。
その事実が、妙に胸に残った。
向日葵の間を抜ける風が、シャツの裾を揺らす。
遠くで子どもの笑い声が弾み、
水路の水が、きらきらと光を跳ね返していた。
私は一歩、あぜ道に足を踏み入れた。
土は柔らかく、思ったよりも優しかった。
舗装路のような安定感はないが、
一歩ごとに、確かな感触が伝わってくる。
向日葵の影が、道に落ちる。
その影は、真っ直ぐではない。
けれど、不思議と迷いはなかった。
振り返ると、コンクリート道はもう遠い。
だが、後悔はなかった。
この道は、選ばれなかった道かもしれない。
正解ではないかもしれない。
けれど――
ここには、夏の匂いがあり、風があり、
自分の足で進んでいるという実感があった。
向日葵たちは、相変わらず同じ方向を向いている。
それぞれ違う形で、違う高さで、
それでも光を見失わずに立っている。
人生も、きっと似ている。
舗装された道が終わる場所から、本当の散歩道が始まるのだ。
向日葵のプロムナード。
それは、誰かに用意された道ではなく、
自分の歩幅で、夏を感じながら進むための道。
足元に土を感じ、
空を仰ぎ、
少し汗をかきながら歩くこの時間こそが、
人生に、ちゃんと味をつけてくれるのだと思った。
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