ハッピーパズル
- iCR

- 2025年12月29日
- 読了時間: 3分
これは、
「幸せになりたい」と願った人のもとに、
ある日突然届けられる――少し不思議な贈り物の話だ。
それは、薄い段ボール箱だった。
差出人は、ネットで検索したところヒットこそしたが、一度も聞いたことのない玩具メーカー。
中には緩衝材と、小さな箱が三つ。
そして一枚の紙が、丁寧に折りたたまれて入っていた。
――――――――――
突然のお届け、失礼いたします。
玩具メーカー○○でございます。
このたび弊社では“解くと幸せになれる”パズルを試作いたしました。
本品は、抽選ではなく“条件を満たした方”へお送りしております。
内容は三つのパズル。
すべてを解くことができた方には特別な変化が訪れるとされています。
なお、試作品につき代金は不要です。
ただ、解けた方はぜひとも弊社宛にご感想を。
どうぞご自身のペースでご自由にお楽しみください。
――――――――――
・・・怪しい。
そう思わなかったと言えば嘘になる。
それでも、不思議と手放す気にはならなかった。
問い合わせをして真偽を確かめるよりも、今すぐ中身を見たいという気持ちのほうが勝っていた。
箱を開けると、そこには三つのパズルが並んでいた。
どれも知恵の輪のようで、見た目は似ているのに、手に取るとそれぞれ違う感触がある。
力任せにどうにかするものではない。
考え、感じ、ひらめくことで形がほどける――
そんな作りになっているのが、触れただけで伝わってきた。
そして、気づいたら自然に思考していた。
「全部解けたら、何か変わるのだろうか・・・」と。
最初のパズルは、指に馴染む金属製だった。
動かせば動かすほど絡まり、焦るほど答えから遠ざかる。
一度、机に置いて深く息をついたとき、
“外そう”とする力を抜いた瞬間に、するりと形がほどけた。
次のパズルは木製だった。
今度は逆に、慎重になりすぎて何も進まない。
壊れるのが怖くて、手が止まる。
けれど意を決して少し強く動かした瞬間、乾いた音とともに外れた。
最後の一つは、軽くて、頼りない。
どう動かしても、あと一歩が足りない。
焦り、考え、時間だけが過ぎていく。
――もう、いいか。
そう思ったときだった。
「解こう」とするのをやめ、ただ手の中に置いた瞬間、
まるで待っていたかのように、静かに形がほどけた。
三つのパズルが、机の上に並ぶ。
そのとき初めて、箱の底に貼られた小さな文字に気づいた。
――
この三つのパズルは
「受け入れること」
「踏み出すこと」
「手放すこと」
を形にしたものです。
すべてを解く必要はありません。
どれか一つでも、あなたの中に残ったならそれで十分です。
――
・
・・
・・・
しばらくの間、達成感と放心状態の狭間をうろうろしていた心が、ようやく“イマここ”に還ってきた。
幸せとは、完成した状態のことだと思っていた。
けれど、もしかするとそれは
「向き合おうとした時間」や
「迷いながら触れた瞬間」そのものなのかもしれない。
箱にパズルを戻しながら、ふと笑ってしまった。
まだ自分の人生という名のパズルは、全然解けていない。
でも、それでいいと思えた。
そして私は、箱をそっと閉じた。
返送用の伝票は、貼らないままに。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ブログを読んで疑問に思ったことや感想などありましたら
コメントいただけると嬉しいです。
では、また次のブログでお会いしましょう(^^)ノシ



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