心が一人でなければ
夜の帰り道、街は思ったより静かだった。
人はたくさんいるのに、声だけが遠い。
スマートフォンの画面には、連絡先がずらりと並んでいる。
それでも、今この瞬間に「会いたい」と思える名前は、驚くほど少なかった。
若いころは、友達が多いことが誇らしかった。
予定が埋まっている週末、鳴り続ける通知。
孤独とは無縁だと信じていたし、そう見える自分でいたかった。
けれど、人に囲まれているはずなのに、心だけが取り残される夜が増えていった。
誰に話しても、話した気がしない。
笑顔を向けても、奥の部分は触れられない。
そんな会話を重ねるたびに、心は少しずつ、一人になる。
ある日、久しぶりに古い友人と会った。
特別な話はしなかった。
仕事の愚痴も、未来の夢も、深く掘り下げなかった。
それでも、沈黙が苦しくなかった。
同じ景色を見て、同じタイミングで息を吐けることが、こんなにも楽だったのかと驚いた。
その帰り道、ふと思った。
心が一人でなければ、それでいい。
周りに誰がいるかより、心の隣に誰が座っているかのほうが大事なのだと。
友達が十人いなくてもいい。
知り合いが百人いなくてもいい。
嬉しいときに「嬉しい」と言える人。
つらいときに、言葉が出なくても察してくれる人。
そんな存在が、数人いれば、人はちゃんと生きていける。
人は、数では救われない。
深さに救われる。
振ってくれる手の数ではなく、握り返してくれる力に安心する。
夜が深まり、街灯の下で立ち止まる。
今日話した言葉より、話さなかった時間のほうが、心に残っている。
それが、繋がっている証拠なのだろう。
たとえ世界から孤立しているように見えても、
心の中に誰かの温度が残っているなら、人は一人ではない。
心が一人でなければ、それでいい。
静かで、小さくて、確かな繋がりが、
今日もそっと、明日へ連れていってくれる。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
では、また次のブログでお会いしましょう(^^)ノシ
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