最果ての木
- iCR

- 4 日前
- 読了時間: 2分
――私は、ここに立っている。
村の中心に、一本だけ根を張り続けている木だ。
人々は私のことを「憧れの木」と呼ぶ。
それもそのはずだろう。
私は芽吹いてからというもの、驚くほどの速さで育った。
幹は太くなり、枝は空をつかむように伸び、
実はどれも瑞々しく、大きく、重たく実った。
風が吹くたび、村のあちこちから声が届いた。
「すごいね」「立派だね」「あんなふうになれたら」
その声は、私の年輪の奥に、静かに染み込んでいった。
だが、すべての視線が温かかったわけではない。
私の成長はあまりにも早すぎた。
昨日まで細かった幹が、今日にはもう別の木のように見える。
枝ぶりが変わり、影の形も違う。
人は、理解できない変化を恐れる。
いつしか私は「憧れ」ではなく
「異質なもの」として見られるようになった。
――欺きの木。
そんな名で、囁かれていることも知っていた。
そして、ある時からだ。
私の中を流れていた力が、急に弱まった。
葉は艶を失い、実は落ち、幹の奥が軋むように痛んだ。
人々は心配そうに私を見上げた。
だが、誰も気づかなかった。
私が、初めて“立ち止まった”だけだということに。
私はずっと、伸び続けていた。
期待に応えるために。
失望されないために。
「立派な木」であり続けるために。
けれど、成長とは本来、
伸びることだけではなかったのだ。
立ち止まり、根を張り直し、
見えないところで壊れた部分を癒すこと。
それもまた、木が生きるということだった。
私は病んだのではない。
ようやく、自分の速度に戻ったのだ。
それからしばらくして、私は再び芽吹いた。
以前ほど派手ではない。
だが、土に深く、静かに根ざした芽だった。
村の人々は言った。
「前よりも、なんだか安心する木になったね」と。
私は今日も、ここに立っている。
誰かの期待のためではなく、
誰かの比較の中でもなく、
ただ、私として。
もし、ここを通りかかるあなたが
「自分は止まってしまった」と感じているなら、
それはきっと――
あなたが“根を張り直している最中”なのだ。
焦らなくていい。
成長は、いつも静かなところから始まるのだから。
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